だまし絵を実現する立体

--- 新しい錯覚の世界 ---

杉原 厚吉


 だまし絵は、オランダの版画家エッシャーが作品の素材として使ったことでも 有名です。そのようなだまし絵は、絵には描くことができても、立体としては 作れないというのが常識的な理解だと思います。

 でも、この常識に反して、だまし絵の中には立体として作れるものもあります。 下の写真がそのような立体の例です。これらは絵ではありません。 多面体の写真です。 「本当は離れているのに、ある特殊な方向から見ると つながって見える」 というずるいトリックは使ってありません。

無限階段 (Copyright in 1997 by Kokichi Sugihara)

 なぜこのような立体が作れるかというと、その秘密は、絵に描かれた立体の 奥行きに自由度があるからです。一枚の絵で、立体を完全に表現することはで きません。同じように見える立体が、無限に多く存在します。私たちが、絵を見て そこに描かれている立体を自然に思い浮かべるのは、この無限の多様性の中から ただひとつを勝手に思い浮かべているからです。私たちはこの思い込みをもって 写真や絵画を見るからこそ、そこに写っている世界を理解できるのです。ですから、 これは、視覚の大切な性質です。

 でも、この性質を逆手に取ると、ありえない立体が作れてしまっているという 錯覚を生じさせることができます。つまり、絵から普通に思い浮かべる奥行き とは別の奥行きを与えることによって、このような立体が作れます。上の立体は この方法でコンピュータを使って作りました。

 普通に思い浮かぶ立体とは奥行きが異なることは、この立体を別の角度から 見るとわかります。実は下のような形をしていました。

 展開図(pdfファイル)は ここ にあります。興味のある方は、この展開図から立体を組み立ててみてください。 ただし、のりしろはついて いませんので,組み立てるときにはつけてください。

 他の例は、私のウエブページ にもあります。


参考文献